人工真皮は、2000年ごろから臨床・応用が始まった新しい医療材料です。
コラーゲンスポンジとシリコーンシートの2層構造で構成されています。
人間の皮膚の「真皮層」の働きを補完し、真皮組織を再生させる効果が期待できます。
美容医療においては、人工真皮を小鼻のくぼみやほうれい線部分に挿入することによって、半永久的に凹みを持ち上げることができる技術として期待が集まっています。
この症例は人工真皮を法令線の下に挿入して、法令線を自然に目立たなくした症例です。
今回は美容医療にも使用されている「人工真皮」に関して詳しく解説していきます。
人間の皮膚構造
人間の皮膚は、表面から順に「表皮層」、「真皮層」、「皮下組織」で構成されています。
今回ご紹介する人工真皮は、皮膚の中間層にあたる「真皮層」の働きを補助するための医療技術になります。
皮膚の各層に関して、それぞれの働きをご紹介します。
表皮層
人間の皮膚の一番外側、空気に触れる部分を表皮層といいます。
厚みは平均0.2㎜と非常に薄いですが、紫外線やウイルスから肌を守り、また肌から水分が蒸散することで起こる乾燥を防ぐ機能があります。
健康的な肌、そしてきめ細やかな肌を保つための部分です。
真皮層
主にコラーゲンとフィブリンという成分、そしてその隙間を支えるヒアルロン酸とエラスチンで構成されるのが、真皮層です。
皮膚の中間層にあたり、厚みは2㎜ほどです。
真皮層の最も大きな役割は、肌の弾力を維持することです。
コラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンを線維芽細胞の中で生成し、ハリと弾力のある若々しい肌を保ちます。
また血管やリンパ管、汗腺など、肌を健やかに保つための機能も備えています。
皮下組織
皮膚の最も下部にある皮下組織は、真皮層と筋肉や骨の間にある結合組織です。
表皮層と真皮層を支えるクッションのような役割を担っています。
人工真皮に期待される鼻周辺の美容医療への役割
人工真皮は、コラーゲンスポンジをシリコンフィルムで包んだ医療素材です。
コラーゲンは肌の真皮層を構成する成分の約70%を占めており、肌の表皮層を支え、ハリを与える機能があります。
コラーゲンが不足している部分では、皮膚のたるみやシワが発生します。
コラーゲンは加齢や紫外線ダメージの蓄積によって徐々に生成量が減少していきます。
従ってたるみやシワ、くぼみが気になる部分に人工真皮を挿入することで、ピンポイントで肌にハリを与え、悩みを解消する効果に期待がもてます。
この症例は法令線には人工真皮を挿入しています。皮膚に傷を作らず口の中から挿入する事が可能です。人工真皮は1〜3ヶ月して自家組織に置き換わります。その間に2〜3割吸収されますが、大部分は残り、この症例写真のように効果は持続します。
人工真皮による治療と従来型治療の違い
従来ではたるみやシワ、くぼみなどが気になる部分に対して、プロテーゼ挿入やヒアルロン酸注入といった美容医療を用いてきました。
とくに鼻翼基部の陥没による濃いほうれい線に対してはプロテーゼの挿入が一般的でしたが、これらの技術と人工真皮による治療は、どのような違いがあるのでしょうか。
従来型の治療法 プロテーゼ挿入
プロテーゼは、鼻翼基部(びよくきぶ)のくぼみに対して用いられてきた施術方法です。
鼻翼基部、つまり小鼻の付け根の部分が陥没していると、頬との凸凹でほうれい線がくっきりと浮き出ます。
頬に鼻が埋まる、アンパンマンのような状態です。※あくまでもイメージです
鼻翼基部の陥没によりほうれい線がはっきりと出現することで、老け顔の印象が強まってしまいます。
この老け顔印象を改善するために、鼻翼基部のくぼみにプロテーゼを挿入してくぼみを盛り上げる方法が、プロテーゼ挿入です。
また、鼻翼基部が陥没していると、口元が突き出て見えるという弊害もあります。
主張が激しい口元も、鼻翼基部にプロテーゼを挿入することで印象を和らげることが可能です。
プロテーゼとは?
プロテーゼは、シリコンでできた人工軟骨です。
心臓の人工弁や人工関節などにも使用される、医療用の安全な素材となっています。
アレルギー反応を起こす可能性がほとんどなく、人体に吸収されたり分解されることはありません。
そのため、プロテーゼを挿入した部分では永久的にくぼみや凹凸が解消されます。
稀に体内でプロテーゼの位置がズレてしまうこともありますが、簡単に修正することができます。
また何らかの要因でプロテーゼを取り外したいと思った際も、簡単に抜去が可能です。
・身体に異物を入れることに抵抗がない
・お悩みの箇所にピンポイントで効果を出したい
・細かい高さまでくぼみを修正したい
という方におすすめの施術法です。
ヒアルロン酸注入
鼻翼基部や、ほうれい線の深い部分に対してヒアルロン酸を注入する施術方法です。
特にくぼみが深い部分を解消するために用いられるヒアルロン酸は、ヒアルロン酸の中でも特に硬めの「ボリューマ」という種類です。
医療用の細い針を用いた注射器で注入しますので、患部を切開する必要がありません。
そのため術後の回復が早く、ダウンタイムがほとんど必要ないという特長があります。
ヒアルロン酸とは
ヒアルロン酸は、高い保湿性をもち、肌を支える柱としての役割を持っています。
ヒアルロン酸の中でも特に硬い種類のボリューマは、皮膚に膨らみをもたせ、シワやくぼみの部分を盛り上がらせる効果があるとされています。
徐々に体内に吸収されてしまいますので、効果は持続しません。
半年から1年程度のスパンで4回程度注入した後はしばらく効果が続きますが、定期的なメンテナンスが必要です。
・顔にメスを入れたくない
・ダウンタイムは短いほうがいい
・まずはお試しで、肌のくぼみやシワを改善してみたい
という方におすすめです。
人工真皮の挿入
鼻翼基部やほうれい線が気になる部分に対して、シート状の人工真皮で厚みを持たせる方法が、「人工真皮の挿入」です。
人工真皮は挿入して1ヶ月ほどで自家組織に置き換わりますので、異物を挿入している感覚はほとんどありません。
自家組織に置き換わった後も吸収されることはなく、ヒアルロン酸のような定期メンテナンスは不要です。
プロテーゼのように位置がズレる心配もありません。
万が一、人工真皮による効果が大きすぎてボリュームダウンをしたい際には、ステロイドの複数注射なので対応することもできます。
・異物を挿入することで生じる違和感が苦手な方
・プロテーゼよりも自然な仕上がりを希望される方
・メンテナンスフリーで半永久的に鼻翼基部のくぼみやほうれい線を解消したい方
という方におすすめの施術法です。
鼻の横に人工真皮を挿入してにデメリットはないの?
人工真皮は臨床実験や一般への流通後も、大きな副作用の報告がない安全な医療素材です。
挿入した部分の真皮細胞の働きを活性化させる効果もありますので、美しさを追求する上で味方となってくれます。
人工真皮による美容施術の注意点
人工真皮による施術を検討する際に注意しておきたいポイントは、仕上がりのバランスです。
鼻翼基部の陥没やほうれい線の濃さの改善ばかりを考えていると、鼻筋とのバランスが上手くとれなかったり、口元とのバランスが崩れたり、不自然な仕上がりになる可能性もあります。
人工真皮を鼻翼基部に挿入する際は、鼻の美容整形に長けた医師によるトータルプランが非常に重要です。
必要に応じて鼻尖形成や鼻中隔延長など複数の施術を組み合わせることによって、美人鼻を形成することができます。
人工真皮の挿入を検討する際は、実績が豊富で信頼できる医師に相談することがとても重要です。
人工真皮で若々しい印象へ。鼻の横のくぼみやシワを改善できます!
人工真皮は、コラーゲンを主体とする全く新しい医療材料です。
肌が本来もつ美肌を維持する機能をサポートしながら、鼻の付け根の陥没やほうれい線に対してピンポイントな改善が可能です。
従来のプロテーゼ挿入やヒアルロン酸注入とは異なり、身体への負担を極力抑えながらも半永久的に効果が持続します。
頬に鼻が埋まったように見えることにお悩みの方や、鼻・ほうれい線・口元のバランスにお悩みの方に特におすすめの医療技術です。
人工真皮により若々しく、美しい印象を追求したい方は、ぜひ一度当院までご相談ください。
夏休みや冬休み、春休みなどの長期連休はすぐに予約が埋まってしまうため、連休中に手術を受けたいという方は、出来るだけ早めにご連絡をお願いいたします。
eクリニックは金沢本院をはじめ、全国展開しています。ご予約はお近くのeクリニックまで。
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このページの監修医師
医師
山崎 俊
経歴
2004年 金沢大学医学部 卒業
2004年 慶應義塾大学 形成外科 助手
2004年 琉球大学医学部形成外科 医局長
2004年 東邦大学医療センター形成外科 医局長
資格
日本形成外科学会外科専門医
再建・マイクロサージャリー分野指導医
所属学会
日本形成外科学会