貴族手術は、手術を受けることで貴族のように上品な印象になれる手術で、日本では鼻翼基部形成術とも呼ばれています。また、貴族手術に用いられる材料は数種類に分類され、それぞれに特徴が異なり、向いている材料とそうでない材料があります。こちらのコラムでは、貴族手術に用いられる材料の種類と特徴、人工真皮とプロテーゼの違いについてご紹介しています。
貴族手術とは?材料の種類と特徴をご紹介
貴族手術とは、小鼻の横にある鼻翼基部という部分に材料を挿入し、窪みをなくすことでほうれい線を改善できる鼻整形です。
鼻翼基部がグッと奥に引っ込んでいる形になると、鼻翼基部からのほうれい線がクッキリと現れやすくなり、年齢を感じさせる印象になることがあります。
そして、貴族手術を受けることで鼻翼基部に厚みができると、鼻翼基部からのほうれい線が薄くなり、若々しい印象になれます。
このように、エイジング効果を期待できるのが貴族手術ですが、鼻翼基部に挿入する材料の種類によっては、あまりおすすめできない場合もあるのです。
それでは、貴族手術に用いられる材料の種類と特徴から見ていきましょう。
自家組織
自家組織とは、お客様ご自身から採取した耳介軟骨や肋軟骨のことで、ご自身の組織を鼻翼基部に移植する形になりますので、異物反応が起こりにくいという特徴があります。
これは生体適合性と呼ばれ、ご自身の組織を使用することならではのメリットだといえるでしょう。
さらに、鼻翼基部の皮下組織と馴染みやすく、自然な仕上がりを期待できるというメリットもあります。
しかしその一方で、自家組織を貴族手術の材料として使用するためには、あらかじめ軟骨を採取しておかなくてはならないというデメリットもあるのです。
つまり、名四骨採取の手術と貴族手術という、2回の手術を受けなければならないということです。
また、肋軟骨を採取した場合では、肋骨というよく動かす場所からの採取であるため、ダウンタイムが長いというデメリットもあります。
さらに、自家組織は皮下組織と馴染みやすいため、経年で体内に吸収されると、貴族手術を受けた当初のデザインが変化してしまうこともあるのです。
そのような理由から、自家組織を用いた貴族手術は慎重に検討する必要があるでしょう。
脂肪注入
脂肪注入は、お客さまの太ももやお腹など、脂肪が多い部分から採取した脂肪を加工し、鼻翼基部に注入する方法です。
脂肪注入では皮膚を切開することがありませんので、表面に傷跡が残る心配がありません。
また、ご自身の脂肪を注入することから、安全性が高いというメリットもあります。
しかし、脂肪注入をする場合でも自家組織と同様に、事前に脂肪吸引で脂肪を確保しておかなくてはなりません。
つまり、2回の手術が必要になるということです。
さらに、脂肪注入ではすべての脂肪が定着するわけではないため、形状が安定しにくいというデメリットもあるのです。
脂肪注入にはメリットもありますが、デメリットの部分を考えるのなら、貴族手術にはあまりおすすめできない材料ということになるでしょう。
ヒアルロン酸注入
ヒアルロン酸注入は、ヒアルロン酸を鼻翼基部に注入するだけというお手軽さから、高い人気を誇る施術です。
ヒアルロン酸のいちばんのメリットは、その場でほうれい線改善の効果を実感できることにあり、注入量を調節することで、お客様に合ったデザインに仕上げることができます。
しかし、ヒアルロン酸は体内に長く留まる物質ではなく、時間の経過とともに体内に吸収されてしまうというデメリットを持っています。
また、ヒアルロン酸を鼻翼基部に注入すると、注入量によっては血管が詰まることがあり、この状態になると鼻が壊死するリスクが高まるのです。
つまり、ヒアルロン酸注入は貴族手術には不向きな方法だと判断できるということです。
人工真皮
人工真皮は、近年の医療業界で注目を集めている材料で、コラーゲンスポンジをシリコンフィルムで包んだ構造となっています。
また、人工真皮は美容整形に留まらず、外傷や熱傷などで破壊された傷創を治癒させる材料としても用いられています。
つまり、信頼性や安全性が高い材料だと判断できるということです。
人工真皮など特筆すべきは、挿入後しばらくすると、毛細血管が人工真皮内に侵入し、1~3カ月後には人工真皮が自家組織として定着するという点です。
このように、やがて自家組織として機能するのが人工真皮ですので、自然な仕上がりを期待できるというメリットを得られます。
その一方で、人工真皮内に毛細血管が侵入せず、新生毛細血管が生成されなかった場合では自家組織として定着しない可能性があります。
このような状態になった場合では、除去手術での対処も視野に入れなければならなくなるでしょう。
しかし、自家組織として定着しない可能性は低いです。
どうしても心配な方は、カウンセリング時に医師から人工真皮の説明を受け、人工真皮での貴族手術を検討することをおすすめします。
ただし、挿入した人工真皮の一部は体内に吸収されますので、手術直後と完成形では、やや形状が変化する可能性がありますので、この点については頭に入れておいてくださいね。
プロテーゼ
これまでの貴族手術は、プロテーゼ挿入で行わることが多く、現在でもプロテーゼ挿入での貴族手術を勧めるクリニックが多いのが現状です。
それは、プロテーゼが貴族手術に適した材料であること、そして、プロテーゼは体内に吸収されることがなく、半永久的な効果を期待できる、その場で効果を実感できるといったメリットがあるからです。
鼻筋を高くする方法として鼻プロテーゼを選ぶ方が多いのも、半永久的な効果を得られるというメリットがあるからです。
では、プロテーゼにはどのようなデメリットがあるのでしょうか。
まず、プロテーゼは同じ人工物でも人工真皮のように自家組織として定着することがありません。
また、体質によってはプロテーゼが合わず、異物反応を起こすリスクもあります。
プロテーゼ挿入では、術後に効果を実感しやすいというメリットがありますが、あくまでも異物として体内に留まりますので、この点が心配な方には不向きな方法かもしれません。
人工真皮とプロテーゼ、おすすめなのはどんな人?
自家組織や脂肪注入では、あらかじめ軟骨や脂肪を採取しておかなければならず、定着率が100%ではないというデメリットがあります。
また、ヒアルロン酸注入には、長期的な効果を見込めず、注入量によっては鼻が壊死するリスクがあるというリスクがあります。
そうなると、人工真皮とプロテーゼのいずれかによる貴族手術を検討する必要性が高まります。
では、人工真皮とプロテーゼの貴族手術では、どちらのほうがおすすめできるのでしょうか。
それぞれに、おすすめできるのはどのような方なのかについてご紹介していきます。
人工真皮がおすすめなのはこんな方
人工真皮がおすすめなのは、以下に該当する方です。
- 異物挿入に抵抗がある方
- 自然な仕上がりをご希望の方
- 体質的に異物反応が心配な方
- 長期的な効果を得たい方
- 表面に傷跡を残したくない方
異物挿入に抵抗がある方
人工真皮は異物であることに変わりはありませんが、やがて自家組織として定着するものであるため、異物挿入に抵抗がある方におすすめできる材料です。
つまり、プロテーゼの挿入に抵抗がある方におすすめの材料だということです。
自然な仕上がりをご希望の方
人工真皮は皮下組織に馴染みやすく、自家組織として定着すると自然な仕上がりになります。
人工真皮とプロテーゼを比較した場合では、プロテーゼのほうがはっきりとした効果を得やすいですが、自然な仕上がりという点で選ぶなら、人工真皮のほうがおすすめできるでしょう。
体質的に異物反応が心配な方
人工真皮は異物反応が起こりにくく安全性が高いとされる材料です。そのため、体質的にプロテーゼでは心配という方におすすめです。
長期的な効果を得たい方
人工真皮は、自家組織として定着する際に、約20%が体内に吸収されます。
しかし、挿入した人工真皮の多くは自家組織として残りますので、長期的な効果を期待できます。
表面に傷跡を残したくない方
人工真皮挿入による貴族手術では、鼻の内部からアプローチすることができるため、外部に傷跡が残る心配がありません。
つまり、傷跡を残したくない方や整形バレが心配な方には特におすすめだということです。
プロテーゼがおすすめなのはこんな方
プロテーゼがおすすめなのは以下に該当する方です。
- 大きな変化を求めたい方
- 半永久来な効果を期待したい方
- 異物挿入に抵抗がない方
大きな変化を求めたい方
プロテーゼによる貴族手術では、お客様のご希望に合わせたサイズや形状に加工したプロテーゼを挿入できます。
そのため、大きな変化にも対応できます。
特に鼻翼の窪みが強く見られる方でも、プロテーゼを挿入すれば問題を解決できます。
半永久来な効果を期待したい方
プロテーゼは体内に吸収されることはなくそのままの形状で残りますので、半永久的な効果を期待したい方におすすめです。
また、プロテーゼの形状が気に入らない、入れ替えたいなどの時には、比較的簡単に抜去できますので、やがて修正する可能性があるとお考えの方にもおすすめできるでしょう。
異物挿入に抵抗がない方
プロテーゼには、大きな変化を実感しやすい、半永久的な効果を期待できるというメリットがありますが、異物として体内に残り続けますので、異物挿入に抵抗がない方におすすめです。
プロテーゼ挿入での貴族手術を考えていたけれど、異物挿入に対する抵抗感が拭えない方には、プロテーゼではなく人工真皮のほうがおすすめできるでしょう。
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このページの監修医師
医師
円戸 望
経歴
・富山大学医学部医学科卒
・高岡市民病院(形成外科・麻酔科・皮膚科)
・Fort Wayne Parkview 病院
・厚生連高岡病院
・金沢医科大学付属病院
・湘南美容クリニック新宿本院
・湘南美容クリニック新宿南口院
・湘南美容クリニック新潟院 院長就任
・湘南美容クリニック金沢院 院長就任
・2020年eクリニック金沢院開院
・大手美容クリニック修正手術技術指導医
・2021年eスキンクリニック開院
・2022年富山院開院
・2023年まぶたのクリニック開院(保険診療)
・2023年大阪院、東京院、名古屋院、岡山院、
福岡院、那覇院、横浜みなとみらい院開院
医師(eクリニック統括技術指導医)
飯田 秀夫
経歴
・1992年 東京医科歯科大学医学部卒業
以降、同大学医学部付属病院、
国立がんセンターなどで頭頸部外科、
形成外科、美容外科を研鑽
・2007年 東京医科歯科大学臨床教授
・2009年 リッツ美容外科東京院
・2013年 リッツ美容外科東京院院長
・2014年 湘南美容クリニック
・2018年 湘南美容クリニック統括技術指導医/
辻堂アカデミア院院長
・2023年 eクリニック 横浜みなとみらい院
プロフィール
のべ300名以上の美容外科医の技術指導を行う。著書の「顔の美容外科手術書」(日本医事新報社)は美容手術の入門書として若手美容外科医の教科書となっている。
資格
日本形成外科学会専門医
医学博士(東京医科歯科大学)
所属学会
日本美容外科学会(JSAPS)
国際美容外科学会(ISAPS)